イギリスの出版事情と日本の出版事情(2020-6-20)

 今、英語と格闘しています。イギリスの出版社から本を出す予定になり、その原稿執筆と、もう少しすると10人余りの執筆者の編集が待っているからです。本当はこの作業は、イギリスでするはずでした。
 イギリスへ行くと、3週間を過ぎたあたりで眠れない夜がやってきます。夢を英語で見ようとするので、脳が興奮して眠れなくなるのです。そのあたりから、徐々に英語の聞き取りと話がスムーズにできるようになってきて、日本語が少し不自由になるはずです。そう、頭のスイッチが切り替わるのです。人により違いますが、私は英語でも韓国語でもこの経験を必ずします。今年も、(不完全ではありますが)英語脳になって翻訳や編集作業をしようと高をくくっていたら、予想外の事態となりました。そして、悪戦苦闘しているわけです。
 さて、英書での出版の話は2016年に遡りますが、その後何度も暗礁に乗り上げ、諦めかけました。しかし、たまたま国際学会で私たちのセッションを聞いていた出版社の人から声がかかり、出版が決まりました。ところが、この先も大変でした。日本の出版は私の数少ない経験からすると、出版会社の会議で合意を得て決まるのですが、何といいますか・・・ざっくりとしていて口約束のような雰囲気なのです。ところが、イギリスは契約社会ですから、まず出版社へ渡すプロポーザルをしっかり書かなければなりません。A4で何枚になったかなあ、タイトル、要旨、目次、執筆者紹介はもちろん、出版の目的、独自性など、しっかりと書きます。そして、出版社がその内容を了承すると、原稿全体の文字数、図版数、原稿締め切り日をはじめ、細かく条件が明記された契約書が送られてきます。編集者3名と出版社がサインして、ようやく契約が成立しました。
 これでGOサインがでたわけですが、執筆者へ送る体裁を作るため引用文献について話し合ったら、これがまた大変。日本以外の執筆者もいますから、少なくとも日本語、韓国語、中国語、モンゴル語、ロシア語、ドイツ語、英語の文献が引用されるでしょう。英語に翻訳した文献名だけでなく、原文も入れたいという他の編集者の意向を受け、それぞれの国により文献の体裁が異なり、さらに各言語でも数種類の引用方法があるので、カッコはどれを使うかなどなど、話し合いが続きました。
 これからも、いくつもの山がありそうです。しかし、出版されれば、世界で初めての東アジアの土器生産と窯に関する英書になるでしょう。世界各地に土器と窯があり、ローマ窯をはじめ盛んに研究されていますから、きっと比較研究するうえで必要な基礎的文献となるはずです。さて、今日も英文の推敲、頑張るとしますか。    (コラム・長友)

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