読書のすすめ3(2020-4-24)


皆さん、元気ですか?今日紹介するのは、近藤義郎さんの以下の本です。写真の左の本が最近文庫化されました(右)。入手しやすくなりましたので、是非手に取ってみてください。

近藤義郎1983『前方後円墳の時代』岩波書店

この本は、発掘調査した遺跡や出土遺物から論を組み立て、しっかりと歴史を叙述した初めての書物として高く評価されています。本のタイトルをみると古墳時代の内容だと思うかもしれませんが、水稲農耕の開始から古墳の終焉までが扱われています。それは、以下のように前方後円墳の成立は水稲農耕の導入と普及が契機となっていると考えるからです。水稲農耕の開始により余剰生産物による富が蓄積され、他方で水利を管理する必要生じると新たな集団関係が生まれました。これを統括する人が富の分配を差配すると、やがて権力を握るようになり、前方後円墳という巨大な墓を築造するようになります。巨大な墓は、首長の墓というだけでなく、新しい首長が首長権を継承したことをしめす舞台装置でもあったと考えたのです。
 一つひとつの章が重要ですが、岡山県津山市の沼遺跡を検討して導き出された、単位集団という理解と、横穴式石室をも群集墳の普及を歴史的に位置付けた論は、特に近藤義郎さんの研究で独自性が強く打ち出された部分です。前者は都出比呂志さんに、後者は和田晴吾さんの論に影響を与えました。
 ところで、水稲農耕の始まりが古墳形成の契機となり、古墳の展開期が初期国家形成過程であるとすると、農耕の開始が国家成立に結び付いたという理屈になります。しかし、1990年代以降、水稲農耕による余剰生産物の蓄積よりも交易網の掌握の方が、初期国家形成の契機になったのではないかという理解が広がっていきます。そこで、そのきっかけとなった研究者の本を、次回は紹介したいと思います。

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