皆さん、元気ですか。昼夜逆転していませんか。
さて、水稲農耕による余剰生産物の蓄積よりも交易網の掌握の方が、初期国家形成の契機になったのではないかという理解が広がっているという話までしました。そのような理解が広がった直接的な研究背景としては、むろん鉄器研究の実態解明がすすんだ点があげられます。鉄の原料は、弥生・古墳時代においては日本列島で産出せず、海外から輸入しなければなりませんでしたが、日常道具においても海外からの輸入に頼るということは、交易の重要性が強まることと結び付くからです。
しかしそれだけではなく、水稲農耕開始の歴史的意味の変質というのが一方であり、それに影響を与えた研究として、前回は渡邊仁の本をあげました。もう一つ、文献史における理解の変化も考慮すべきではないかと思います。今回は、以下の本を紹介したいと思います。
網野義彦2012『歴史を考えるヒント』新潮文庫
山尾幸久1977『日本国家の形成』岩波新書
網野善彦さんは、考古学ではなく日本史研究者です。この本の5章に「誤解された「百姓」」という内容があり、「百姓」の実態は決して農民に限られたものではなく、様々な生業に従事する人が沢山いたことが述べられています。網野さんは、まさにこの百姓の実態を史料から説き起こした研究者です。この本は、一般の方へ向けた講演をまとめたものなので非常にわかりやすい一方、詳細な論証を省いて記述されていますが、専門書もたくさんありますので是非読んでみてください。
農耕が社会の基盤になったという理解が、特に日本の国家形成において重視される理由のひとつは、古代以来の税の取り方にもあったと思われます。そのため、そこを疑い反論した網野さんの研究は、日本史研究に多大な影響を与えただけでなく、日本国家の経済基盤が水稲農耕にあるという理解を念頭におきながら、水稲農耕の導入の重要性を考察した考古学研究へも間接的に影響するものだと考えられます。
紹介したいもう一冊の本は、山尾幸久さんの書籍です。少し長くなりましたので、続きは次回にしたいと思います。
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